97・98年末年始 : 香港、広州  〜 初の同伴者 〜

"香港に行きたい"と彼は言う。彼は大学の同級生。彼は何故か初めての海外旅行を、私同伴で香港に行くと決断した。私は快諾したが一つだけ条件を出した。"俺は連れて行ってあげるというつもりはない。一緒に行くだけだ。"と。私はガイドではない。彼には海外旅行を自力でやってほしかった。私にとって、カイタック空港への着陸は3回目だった。私は、香港経由イスタンブール行きの航空券を次のたびで使うため、香港には計4回来ることが確定していた。パスポートの入国記録は、実に、7回になるのである。マカオや広州に行って戻ってきたりしているうちに、香港のスタンプだらけになってしまった。私にとっては、もう、当時住んでいた柏より地理に詳しくなるぐらい知り尽くした香港であった。しかし、日本から同伴者を連れてきたことが、新鮮さを与えてくれた。彼は"鳩が食べたい"と言い出す。そう、私は、特定の食材を"選んだ"ことはなかった。あいにく鳩は食えなかったが、食を求める旅もなかなか良いものであった。安宿も、あまり衛生的でない食堂も、やたら歩くことも、彼は嫌がらなかった。それが私には一番うれしいことだった。

彼は六日ほどで日本へ帰ったのであるが、最終日に彼が使ったお金は、それまでの五日間で彼が使った合計額をはるかに越えていた。そう、香港は彼にとっても魅力的な買い物天国であった。この旅行が買い物に終わらずに、最初の 五日間は間違いなく"旅"ができたことは幸いであった。

彼には私の旅の哲学がどれほど伝わったか分からないが、少しでも役にたっていれば幸いである。